この春社会人になってこれから奨学金の返済が始まる方も多いことと思います。一人暮らしを始めた方は家賃も必要となってきます。
多くの新社会人にとって、この先結婚や子育て、住居購入などと物入りがかさむ人生の出発でもあります。
奨学金の返済がこれからの生活に大きな負担となることを実感し始めている方もおいででしょう。
かしこい返済方法というものはあるのでしょうか。
あるいはこれから奨学金の利用を考えている方もその返済について前もって理解しておくことは極めて重要なことです。
はからずも奨学金の返還を滞納してしまった方も少なくはありません。どのように対処したらいいのでしょうか。
「教育ローンと奨学金」シリーズの今回は、奨学金を「返済」という視点からお話します。
もくじ
はじめに
■このページでの『奨学金』とは独立行政法人 日本学生支援機構(略称:JASSO)の奨学金を指します。
■当記事内では日本学生支援機構を略称のJASSOと記述することもあります。
■日本学生支援機構 奨学金の種類
@第一種奨学金
無利子
奨学金の月額は学校の種類、通学方法などにより異なる
A第二種奨学金
有利子
月額3万、5万、8万、10万、12万円から選択
B入学時特別増額貸与奨学金
有利子
入学金など入学初年度の金のかかるときに1度だけ支給される
10万、20万、30万、40万、50万円から選択
■当記事は日本学生支援機構のウェブサイトを参考に構成いたしました。
https://www.jasso.go.jp/
記載に当たっては慎重を期したつもりでありますが、当方の錯誤、誤謬、記載間違いなどがあるやもしれません。ご利用にあたりましては日本学生支援機構のウェブサイトにて再度のご確認をいただきますようお願いいたします。当記事をご利用になってのいかなる損失・損害にも当方はその責を負いかねますことご承知くださいますようお願いいたします。
日本学生支援機構への返済が始まるのは卒業後(貸与終了後)の7ケ月目からです。通常は10月からとなります。
奨学金を申請するときに「月賦返済」または 「月賦・半年賦併用返済」を選び、そして金融機関の口座も届けます。
返還が始まりますと、その口座からの振替日は、月賦の場合は毎月27日、半年賦は1月および7月の27日です。
これから申請する方のために「月賦返済」と「月賦・半年賦併用返済」についてすこし触れておきましょう。
●月賦返済は文字通り毎月同じ金額を返済する方法です。
●月賦・半年賦併用返済は毎月の返済に加えて年2回返済金をプラスする方法です。
月賦・半年賦併用返済は、毎月の返済額を少なく抑えて半年毎に補うということですから,返済年数が少なくなるということではありません。どちらを選んでも返済総額に変わりはありませんのでご注意下さい。
月賦返済をえらんでおき余裕があれば繰り上げ返済をして返済期間を短くするというのもひとつの方法かと思います。しかしながら『余裕があれば・・・』というところが現実としてはむずかしいところで、やはり半年毎のボーナスできちんと返済するために半年賦併用返済をえらぶということも頷けます。ボーナスは必ず支給されるということが前提になりますので、このあたりは、じっくりお考えになる必要がありますね。
奨学金の返済は月々決められた額を続けるわけですが、最長では20年あります。決して短い期間ではありません。この負担を軽減したいと思う方は少なからずいらっしゃることでしょう。
社会に出て収入が安定し少しでも余裕ができてきましたら、繰り上げ返済をお考えになることもよろしいかと存じます。JASSO奨学金の繰り上げ返済には手数料が掛かりません。
多くの方が利用している第二種奨学金には利息が含まれています。繰り上げ返済はその利息分の軽減と返済期間を短縮することができます。
毎月の返済額と返済年数の例を下の表にまとめてみました
■第一種奨学金を4年間借りた場合の返済月額と返済年数
(無利子)
通学形態 | 貸与月額 | 貸与月数 | 貸与総額 | 返還月額 |
返還回数 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
国・公・私立 | 自宅・自宅外 | 30,000円 | 48か月 | 1,440,000円 | 9,230円 |
156回 |
私立 |
自宅 | 45,000円 | 48か月 | 2,160,000円 | 12,857円 |
168回 |
自宅外 | 51,000円 | 48か月 | 2,448,000円 | 13,600円 |
180回 |
|
国・公立 |
自宅 | 54,000円 | 48か月 | 2,592,000円 | 14,400円 |
180回 |
自宅外 | 64,000円 | 48か月 | 3,072,000円 | 14,222円 |
216回 |
■第二種奨学金を4年間借りた場合の返済月額と返済年数
有利子 年利1.0%の場合
貸与月額 | 貸与月数 | 貸与総額 | 返還総額 | 返還月額 |
返還回数 |
---|---|---|---|---|---|
30,000円 | 48か月 | 1,440,000円 | 1,543,214円 | 9,892円 |
156回 |
50,000円 | 48か月 | 2,400,000円 | 2,597,188円 | 14,428円 |
180回 |
80,000円 | 48か月 | 3,840,000円 | 4,257,117円 | 17,737円 |
240回 |
100,000円 | 48か月 | 4,800,000円 | 5,321,420円 | 22,172円 |
240回 |
120,000円 | 48か月 | 5,760,000円 | 6,385,730円 | 26,606円 |
240回 |
出典:日本学生支援機構 奨学金 大学・返還例
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/sample/sample_daigaku.html
上の表でおわかりのように例えば第二種奨学金で月額10万円の貸与を4年間(48ヶ月)続けると金利1%で 毎月22,172円の返済が20年も続きます。
第一種と第二種を併用して借りていた場合はさらに返済額が増えることになり、家計への負担がかさみます。借りれるだけ借りておこうなどと安易な気持ちで利用しますと将来後悔することになりかねません。
先ほども申しましたが結婚資金や住宅ローン、更に子どもができ教育費などと、なにかと負担は嵩んできます。やはり余裕のあるときには繰り上げ返済を行いたいものです。ただし、奨学金は金利が低いので無理して繰り上げ返済をせずに、むしろ貯蓄を殖やしていくほうがよいのではという考え方も当然でてまいります。
いずれにしましても、無理のない計画を立てることが長い人生を生き抜く知恵であります。
日本学生支援機構のホームページ内に「奨学金貸与・返還シュミレーション」があります。ご自身に当てはまる項目を選択し数値をえらぶことで卒業後の返済額を試算できます。⇒ http://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/
それでは実際に項目を入れてやってみましょう。
ここでは便宜上以下のように選択・記入してシミュレーションしてみます。
↓
奨学金の総額は下のようになります。
■ 第一種奨学金
⇒ 貸与総額 2,400,000 円 (保証料総額 85,728 円)
■ 第二種奨学金(入学時特別増額貸与奨学金あり)
⇒ 貸与総額 5,300,000 円 (保証料総額 285,829 円)
■ すべての貸与総額の合計額
⇒ 7,700,000 円
上の条件を入力して得たシミュレーション結果の概要がこの表です。
■第一種奨学金の返還例 返還期間:2022年10月〜2042年9月 (20年間)
定額返還方式※
返還方法 | 返還額 | 返還回数 | 返還総額 |
---|---|---|---|
月賦返還 の場合 |
通常 :10,000円/月 |
240回 | 2,400,000円 |
月賦 半年賦併用返還 の場合
|
通常 :5,000円/月 |
240回 |
2,400,000円
|
通常 :30,000円/半年 |
40回 |
■第二種奨学金の返還例 返還期間:2022年10月〜2042年9月 (20年間)
返還方法 | 返還額 | 返還回数 | 返還総額 |
---|---|---|---|
月賦返還 の場合 |
通常 :22,761円/月 |
240回 | 5,462,598円 |
月賦 半年賦併用返還 の場合
|
通常 :11,380円/月 |
240回 |
5,462,891円
|
通常 :68,291円/半年 |
40回 |
※上記シミュレーションの貸与利率は4,800,000円に対しては0.27%、入学時増額分の500,000円に対しては0.47%で計算。
シミュレーション結果についての注意書きがありますのでそのまま写しておきます。
●当シミュレーション結果は、入力いただいた内容に基づき貸与・返還の概算をお知らせするものです(課税対象所得については、単身世帯を例として年収から算出しています。)。実際の貸与・返還の際に決定する条件により、当シミュレーションとは異なる結果となる場合があります。ご了承ください。
●来年度以降に貸与が開始される奨学金の保証料については、今年度の保証料を目安として表示しています。
第一種奨学金の返還方式(返し方)は定額返還方式と所得連動返還方式の選択制です。
上の例では「定額返還方式」をえらびましたが、収入に連動して算出される返還月額方式の「所得連動返還方式」でもシミュレーションできます。日本学生支援機構のシミュレーションページでご自身に当てはまる条件を埋めてぜひ試してみてください。
http://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/
近年、奨学金の滞納問題が大きく取り沙汰されています。
JASSOのウェブサイトにあるアンケート調査によりますと
"延滞が始まった理由(きっかけ)"としては次のように掲げられています。(複数回答)
・家計の収入が減った(69%)
・家計の支出が増えた(41%)
・入院/事故/災害等(23%)
・忙しかった(14%)
・返済を忘れていたなどのミス(11%)
・返還するものと思っていない(3%)
・その他(25%)
また、
"延滞が継続している理由"は次の通りです(複数回答)
・本人の低所得(52%)
・奨学金の延滞額の増加(47%)
・親の経済困難(40%)
・本人の借入金の返済(26%)
・本人の失業中/無職(17%)
・家族の病気療養(12%)
・本人の病気療養中(8%)
・その他(26%)
*小数点以下は四捨五入しています。
出典:https://www.jasso.go.jp/sp/about/statistics/zokusei_chosa/h26.html
上記のようにさまざまな延滞の理由があります。返済の延滞が3ヶ月以上続きますと信用情報機関*に滞納機関などを含めた個人情報が登録されることになります。いわゆるブラックリストというものです。
(ブラックリストのお話や信用情報機関につきましてはこちらの記事もご覧ください
⇒教育ローンの審査に落ちた。信用情報って?・・ブラックリスト!?)
いったん個人信用情報機関に登録されますと返済が終わっても、更に5年間は登録され続けることとなります。となりますと住宅ローンを始め各種ローンを組んだりクレジットカードの新規発行などがきわめて難しくなることは自明で、生活に支障をきたすことにもなりかねません。
もし病気や失業ということになった場合には返済猶予制度などがありますから、早めにJASSOに相談しましょう。
(在学中は在籍校が窓口ですが、卒業後はJASSOと直接関わることになります。)
●奨学金の返済を滞納しますと・・・
⇒JASSOから本人宛あるいは連帯保証人などに対して返済の督促が行われます。
●滞納が3ヶ月をすぎると・・・
⇒個人情報が信用情報機関*に登録されます。
●滞納4ヶ月目からは・・・
⇒民間の債権回収会社に回収業務が委託されることになり、そちらからの督促が続くことになります。
●更に滞納が続きそれが9ヶ月目になりますと・・・
⇒裁判所へ支払督促の申し立てがされて、法的措置の手続きが行われることになります。
jassoの奨学金を利用する際には『確認書兼個人信用情報の取扱いに関する同意書』を提出します。
「個人信用情報」とは個人情報※に加えて金融機関等からのローンやクレジットカードの契約状況や借入状況、返済状況、滞納歴などが記載されたものです。
つまり借入に関してきちんと返済しているかを把握するための情報です
※個人情報 : 氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先などの個人の基本的な情報。
先ほども申しましたように、奨学金を借りるときには個人信用情報の取扱いに関する同意書を提出しなければなりません。この制度に関しては賛否があるところですが、提出してある以上は従わなければなりません。
返済が困難になってきましたら、返済猶予制度があります。
次の項ではこの返済猶予制度についてお話します。
JASSOの奨学金は申し込みの際に人的保証か機関保証を選びます。
人的保証
人的保証というのは連帯保証人と保証人を立てることです。通常は保護者が連帯保証人になり、本人の4親等以内の親族1人(おじ、おば、兄弟姉妹など)が保証人となります。
連帯保証人は借主と同じ債務を負うことになります。本人と連帯保証人が返済できないときは保証人に返済の義務が生じます。
連帯保証人は本人と同じ全額の支払い義務があり、保証人は保証人全員で分割した分の支払い義務があります。通常は連帯保証人1人と保証人1人ですから、保証人の支払い義務は1/2です。
例を挙げてご説明します。
例えば大学時代に奨学金を借りていたAさんが卒業後に利息と延滞金を含む債務200万円を残して破産したとします。連帯保証人はその金額全部200万円の支払い義務があります。保証人は1/2の100万円の支払い義務があるということです。
機関保証
機関保証を選べば連帯保証人と保証人は必要ありません。変わってJASSOの指定保証機関(公益財団法人 日本国際教育支援協会)が保証してくれます。有料です。
保証料は毎月の奨学金から差し引かれます。保証料を差し引かれた金額が振り込まれます。
保証料は奨学金の金額によって異なります。
先ほどのシミュレーションの例では下のようになっていました。
■第一種奨学金
貸与総額2,400,000円で⇒保証料総額85,728円
月額: 50,000円⇒保証料月額 : 1,786円
■第二種奨学金
貸与総額5,300,000円で⇒保証料総額285,829円
月額: 100,000円⇒保証料月額 : 5,393円
(入学時特別増額貸与奨学金500,000円 保証料 : 26,965円)
保証料の目安を掲げておきます。
(第二種奨学金、貸与4年間(48月)、返済利率3.0%の場合でシミュレーション)
貸与月額 | 保証料月額 |
---|---|
30,000円 | 1,181円 |
50,000円 | 2,246円 |
80,000円 | 4,657円 |
100,000円 | 5,822円 |
120,000円 | 6,986円 |
上の表にあるように毎月5万円の貸与を四年間続けますと、その保証料は
2246円x48カ月=107,904円となります。結構な金額となってしまいますね。
機関保証は奨学金の返済を支払えないときの保証をしてくれますが、返済を免れるわけではありません。今度はその保証機関から請求されることになります。返済する先が変わっただけのようですが、実は、延滞金の利率も上がります。さらに分割払いではなく一括弁済となります。
しかし
もし破産※ということになれば機関からの請求は消滅して返済をしなくてもよいこととなります。
人的保証の場合は本人が破産したら連帯保証人へ請求がいきます。
上で申しましたように機関保証を選べば破産の場合は負債はなくなります。
個人再生は負債を減額して3年間(5年までの延長も有)で返済していくことになります。
※
破産手続き(自己破産手続き)と民事再生手続き(個人再生手続き)は別のものです。
申請時に選んで提出した保証制度を途中で変えることは原則できません。
奨学金の申請時に人的保証か機関保証かを選んで提出します。そして進学届をだしたあとは特別な理由がない限り変更はできませんので慎重に考えてください。
人的保証を選んだが保証人がなくなった場合などは機関保証への変更が認められることもありますが、機関保証から人的保証へ途中で変えられることは原則できないと思ってください。
保証人の死亡などで機関保証に変えられることができた場合の保証料は一括で支払うことになります。
返還が困難な事情というのは経済的困難や失業、病気、災害などが考えられます。
返還猶予の制度は自身で申告して成り立つものですから、そのような状況になったら早めに申請を行うことが肝心です。放っておきますと悪質な滞納と判断されてしまう恐れがあります。
返済猶予が承認されれば、返済を止めてその間の延滞金や利息も免除されます。
返済猶予の期間中に生計の立て直しを図り、再び奨学金の返済ができるようにしましょう。
奨学金返済が困難になる事情が発生した時のためには、次の制度があります。
減額返還制度は月々の返済額を1/2あるいは1/3に減らして返済する方法です。(1/2か1/3を選びます)
返済総額が減額されるわけではありません。利息を含み返還予定総額を全額返済することに変わりはありません。
1年ごと申請します。最長15年(180カ月)の延長ができます。5年間分の返済を15年かけて返済することができるということです。ただし1年ごと毎年申請します。
途中で通常の変換に戻すこともできます。
減額返還制度の利用を申請する場合、「経済困難事由」の収入等の基準が決められています。
減額返還・経済困難事由 収入等の基準 |
|
---|---|
給与所得 | 年間収入金額325万円以下 |
給与所得以外の所得 | 年間所得金額225万円以下 |
返済を一定の期間先送りする制度です。
返還の総額が増えることはありません。利息を含み返還予定総額に変わりありません。
最長は10年間(120カ月)延長できます。(災害、病気、生活保護受給中などのばあいはその状態が継続している期間)。
この制度も1年ごとに申請を続ける必要があります。
途中で通常の変換に戻すこともできます。
返還期限猶予・経済困難事由 収入等の基準 |
|
---|---|
給与所得 | 年間収入金額300万円以下 |
給与所得以外の所得 | 年間所得金額200万円以下 |
所得連動返還制度は2012年度に創設された新しい制度です。
家庭の経済状況が苦しい世帯の学生本人が、卒業後に一定の収入を得るまでの間は返還期限を猶予するというものです
家計支持者(多くは保護者)の世帯収入の基準以下(下の表参照)の場合には申請して返済猶予を願いでることができます。猶予期間は定められていなく無期限なのですが、返済が免除されるわけではありません。あくまでも返済の猶予ですからご注意してください。
家計支持者の所得金額(父母共働きの場合は父母の合算額)が下表の金額となる場合です。
給与所得のみの世帯 | 年間収入金額(税込)が300万円以下 |
---|---|
給与所得以外の世帯 | 年間収入金額(税込)から必要経費(控除分)を差し引いた金額が200万円以下 |
所得連動返還の対象は第一種奨学金(無利子)だけです。
第二種奨学金や入学時特別増額貸与奨学金の返還にはこの制度は利用できません。
第一種と第二種を併用して貸与を受けていた場合は、第一種が無期限の返済猶予となったとしましても、第二種に関しては期限がある返済となります。
先に掲げました返還期限猶予制度の表では
「経済困難」事由の収入基準額は給与所得者は年間収入300万円(給与所得者以外は年間所得200万円)となっていました。
2014年度の緩和措置で上記基準額を超える場合でも
減額返還あるいは返還期限猶予を申請できることになりました。
JASSOのホームページから引用しておきます。
↓
「経済困難」事由の収入基準額(給与所得者は年間収入300万円(給与所得者以外は年間所得200万円))を超える場合でも、特別な支出を控除して収入基準額以下となる場合は、減額返還制度及び返還期限猶予を申請することができます。平成26年4月から、以下についても控除することとしました。
1.本人の被扶養者について1人につき38万円控除します。
従来の親等へ生活費補助の控除は、48万円から38万円に変更になりました。
2.減額返還適用者は一律25万円控除します。(減額返還の適用は、給与所得の方は325万円、給与所得以外の人は225万円が目安となります)
なお、本人の医療費及び本人が扶養している者の医療費に係る特別な支出の控除は従来どおりです。
出展:https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henko/page11.html
年間収入が300万円以上あっても、扶養家族がいて生活が苦しく奨学金の返済が困難な場合はJASSOに相談してみるのも一法でしょう。
すでに延滞している方でも遡って返還期限猶予を申請できます。
滞納していても猶予申請をあきらめる必要はありませんが、収入基準がより厳しく申請も煩雑であるということは否めません。
1.特に優れた業績による返還免除制度
2.本人の死亡または精神もしくは身体の障害による返済免除
奨学金の返済の一部または全部が免除される制度として「特に優れた業績による返還免除制度」というものがあります。これは「第一種奨学金(海外大学院学位取得型対象)」の奨学生を対象とした制度で、奨学金の利用者のどなたにも当てはまるというものではありません。
第一種奨学金を受けた大学院生で在学中特に優れた業績を上げた方が対象ですから、該当する方は極めて少ないといえましょう。
すでに申しましたように返済の猶予の制度はありますが、上記制度以外には返還免除の制度はありません。
ただし「本人の死亡または精神もしくは身体の障害による返済免除」はあります。
本人が死亡し返還ができなくなったとき、精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失、または労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったときに、願い出により返還未済額の全部又は一部の返還が免除される制度です。
繰り返しますが、先に挙げた極めて優秀な大学院生の制度を除くと、返済免除の制度はないということになります。(返済猶予制度はあります)
例外は本人の死亡か、精神または身体に高度な障害が発生した時だけというのが現状の制度です。
つけたし
日本学生支援機構の前身である日本育英会のころには教員などの職に就いた場合の返還免除制度がありました。
この制度は廃止されて現在はありません。
同じく大学研究職への免除特典も廃止され現在はありません。ですから特定の職業に就けば返還免除特典があるという制度はなくなりました。
以上返還猶予制度をふくめて奨学金の返済についてお話してまいりました。
これらの返済猶予制度を知らない、あるいはよく理解していなかったという方が意外に多いのです。
JASSOが奨学金延滞者と無延滞者に行ったアンケート調査「平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」*を見てみますと多くの方が「返還義務」のあることは申し込み手続きを行う前から承知しています。
(延滞者の50.5%(回答者数:2,789人)、無延滞者の89.1%(回答者数:2,395人)が申請手続きを行う前から返還義務について知っていました。)
ところが返還期限猶予制度についてはほとんどの方が返還が始まってから以降に、この制度があることを知った(あるいは知らない)と答えています。
猶予制度の認知率は
延滞者(回答2,799人) : 72.0%、
無延滞者(回答2,392人): 62.8%
返還が始まる前までに認知していた比率は、
延滞者 :合計 4.6%、
無延滞者:合計 33.0%、
また延滞者では
「延滞督促を受けてから知った」:51.2%
*出典;
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/zokusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2018/03/19/h28zokuseichosa_gaiyo.pdf
これらの数字によれば、返還期限猶予制度をいつ知ったかが延滞状況に密接に関わっていることがみてとれます。
先にも触れましたように滞納が続きますと個人信用情報機関への登録がされます。いわゆるブラックリストと呼ばれているものです。となりますとクレジットカードやローンなどが組めないなどと生活に支障をきたすことになりかねません。
奨学金も借金である以上リスクが伴います。
そのリスクを理解し早い段階から返済の対策を講じておくことが奨学金利用の要であると思います。
以上日本学生支援機構の奨学金について「返済」の面からお話してまいりました。これで言い尽くせたとは思っておりません。また項を改めてお知らせしたいと思います。
最後に、奨学金の返済に窮したらどこに相談するのかを掲げてこの項を閉じます。
@まだ延滞はしていないけれど返還がきわめて困難になりそうな場合は、
まず日本学生支援機構の奨学金返還相談センターに相談します。
■日本学生支援機構の奨学金返還相談センター
■電話(ナビダイヤル)0570-666-301
■ホームページからもできます。
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/info.html
A奨学金返還相談センターで相談してみて、返還期限猶予や減額返還制度の利用はできないとなった場合、
あるいは
延滞金が既にたくさん発生している場合などには
奨学金問題対策全国会議に相談するのもひとつの方法です。
■奨学金問題対策全国会議
■電話 03-5802-7015(月曜〜金曜 9:30〜17:30)
■HP:http://syogakukin.zenkokukaigi.net/
全国各地の弁護士や税理士が所属しており、各地での相談窓口も開設しています。
B自己破産手続き、民事再生手続きをしなければならないと決断している方は弁護士か司法書士に相談することになりましょう。裁判手続きは本人自ら行うこともできるかもしれませんが、法律の専門家に依頼することが一般的でしょう。
経済的に余裕がない、という場合は「法テラス(日本司法支援センター)」に相談することもできます。法律相談は無料で、弁護士や司法書士に依頼する費用は法テラスが立て替えを行います。その立て替え費用は利用者が原則月額5,000円〜10,000円を支払います。
利用の条件のひとつに申込者及び配偶者の収入要件(収入等が一定額以下であること)と資産要件(資産の時価と現金、預貯金との合計額一定額以下であること)が定められています。詳細は下記のウェブサイトでご確認下さい。
■法テラス・サポートダイヤル:0570-078374, IP電話からは:03-6745-5600
(平日9:00?21:00,土曜日9:00〜17:00)
■HP:http://www.houterasu.or.jp/sp/index.html