【2021年10月・記】
毎年この時期になりますと、総合型選抜(旧AO入試)の合格発表の話題が持ち上がります。私立大学の総合型選抜では11月になると間もなく合格発表が始まります。通常は合格から入学手続きまでは短い期間しかありません。入学手続きに支払うお金はまったなしということになります。準備しておきませんとあわてて教育ローンを申し込んでも間に合わないことになりかねません。入学時納入金の納入時期やその金額などを前もって把握して準備しておくことが肝要です。
合格後の期限内に初年度納付金のうち入学手続き時納付金として入学金と前期分の学費を納入しなければなりません。その期限は私立大学の場合で概ね合格発表後1,2週間が一般的でしょう。入学金だけではなく前期分の授業料も併せて納入するのが通常です。
初年度納付金は私立大学と国公立大学ではだいぶ差があります。また私立では学部、学科によっても差があります。表に掲げましたように初年度納付金は入学金・授業料・施設設備費の合計です。国公立大学の施設設備費は一般的にはありません。必要な場合もありますが数千円〜150,000円程度と個々の大学や学部によって異なります。
私立大学の初年度納付金(入学金・授業料・施設設備費の合計・令和元年度調査)は、文科系で訳117万円、理科系では理科系となっています。
●私大文科系学部 約117万円、
●私大理科系学部 約155万円
●私大医歯系学部 約480万円
このうち入学手続き時の納付金としては、おおまかにいって初年度納付金の60〜70%が入学手続き時納付金として必要になります。●文科系で約70万円〜、●理科系では100万円前後を支払うことになるでしょう。上でも申しましたように、納付期限は合格後短い期間ですから、前もって準備しておく必要があります。
単位:円
初年度学生納付金 私立大学 | ||||
---|---|---|---|---|
私立大学 学部 |
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計 |
文科系学部 | 793,513 | 228,262 | 150,807 | 1,172,582 |
理科系学部 | 1,116,880 | 255,566 | 177,241 | 1,549,688 |
医歯系学部 | 2,867,802 | 1,073,083 | 862,493 | 4,803,378 |
その他学部 | 959,899 | 256,521 | 234,883 | 1,451,302 |
全平均 | 911,716 | 248,813 | 180,194 | 1,340,723 |
国立大学は文部科学省令による標準額があります。ただし各国立大学が法人化されており、それぞれの大学が標準額を超えて授業料を定めることもできます。そのような場合でも標準額の10パーセントまで、という上限が定められており、大幅に上がることはありません。
単位:円
国立大学 学費標準額(2021年度 文部科学省令) | |||
---|---|---|---|
昼/夜間 | 入学金 | 授業料 |
合計 |
昼間部 |
282,000 |
535,800 |
817,800 |
夜間部 |
141,000 |
267,900 |
408,900 |
単位:円
公立大学の初年度納入金 【2021年度:大学昼間部】 大学平均値 | ||
---|---|---|
入学料 | 授業料 |
*合計 |
228,613 (地域内) 391,305 (地域外) |
536,363 |
782,302(地域内) 944,994 (地域外) |
*公立大学の合計金額には入学検定料(17,326円)が含まれています。
出典:2021年度学生納付金調査結果より平均値を抜粋
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kouritsu/detail/20210930-mxt_daigakuc01-1284429_1.pdf
いつも申していることですが、奨学金の支給は入学後ですから、入学時にかかるお金には間に合いません。日本学生支援機構の奨学金には「入学時特別増額貸与 奨学金」がありますが、こちらも入学後の支給です。
「入学時特別増額貸与 奨学金」が採用された方はろうきん(労働金庫)の「つなぎ融資」制度ともいえる「入学時必要資金融資」があります。入学時特別増額貸与 奨学金の採用決定は10月下旬ごろでしょうから、総合型選抜の入学手続き支払いには間に合わない場合もあります。
■当サイト内関連記事
●入学時特別増額貸与 奨学金
*この奨学金(一時金)の支給は進学後ですから、普通は入学金納付などには間に合いません。
●ろうきん(労働金庫)の前借り制度「つなぎ融資」 「入学時必要資金融資」
・入学時必要資金融資は入学時特別増額貸与奨学金が交付されるまでの間、ろうきんが入学時に必要な資金を、貸してくれる制度です。
・ろうきんの入学時必要資金融資は入学時特別増額貸与奨学金の採用が前提です。この採用の決定通知は通常10月下旬ごろですから、その前に入学金が必要な場合(例えばAO入試など)はろうきんの入学時必要資金融資でも間にあわないことになります。
金 利 年1.70%程度(固定) 令和2年9月1日現在
出典:https://all.rokin.or.jp/file/reiwa3_syougakusei.pdf
既述のとおり大学の初年度納付金の額は国公立と私立ではだいぶ差があります。
また入学試験の方法により合格発表の時期が異なりますから、自ずと入学手続の時期も違います。つまり入学試験の方法によって納付金の支払い時期が異なるわけです。
合格発表の時期は大学によって異なります。おおまかな目安としては次のようになるでしょう。
●一般選抜(旧一般入試)の合格発表は私立大学で2月下旬〜3月下旬。国公立大学は「大学入学共通テスト」と各大学が個別に行う個別試験(2次試験)で異なりますが合格発表は前期が3月上旬(国3/6〜、公3/1〜)、中・後期が3月20〜23日ごろが多くなっています。(2021年度の場合)
●総合型選抜(旧AO入試)の合格発表は私立大学では11〜12月頃、国公立大学では11月以頃です。
●学校推薦型選抜(旧推薦入試)の合格発表は私立、国公立とも12月以降が一般的なところでしょう。
合格発表時期の目安 | ||
---|---|---|
入学試験 | 私立大学 | 国公立大学 |
一般選抜 |
2月下旬〜3月下旬 |
3月上旬〜3月上旬 |
総合型選抜 |
11〜12月頃 |
11月以頃 |
学校推薦型選抜 |
12月以降 |
※合格発表時期は概略の目安です。大学により大きく異なることもあります。各大学の案内書等で確認してください。
入学金や学費についてご案内してきましたが、大学進学に必要な費用は入学金や授業料だけではありません。合格して納付金を収めたが入学しなかったという場合もあります。
進学前の受験費用も見落とせません。模擬試験やオープンスクールの参加費、受験料、交通費、宿泊費などがけっこう嵩みます。入学までには下宿の入居費や机椅子寝具日用品等新生活の準備費用なども必要となる場合もあります。
新しい学生生活が始まれば、学費は引き続きかかります。またパソコン代や教材費なども必要になるかもしれません。これらの支出を総合して見直し計画しておくことが必須となります。全額親が負担できるのか。子どものアルバイトは不可欠なのか。奨学金で賄えるのか。あるいは教育ローンを利用するのか。はたまた教育ローンと奨学金の併用をしなければならないのか。家族で話し合い決めて準備しておくことが不可欠です。
こちらの記事もご参考になさってください。
→教育ローンと奨学金の併用